<ポケットの中の一ダース>
とある公園にて……。
「なぁ栞、お前ポケットにどれくらい物を入れてるんだ?」
祐一は前々から気になっていた疑問を、栞に聞いてみる。
栞は前に、どう考えてもポケットに入りきらないサイズのスケッチブックを、祐一の目の前で出して見せていたのだ。(他にもいろいろ入ってるんですよ。と自慢気に栞が微笑んでいた)
「どれくらいですか? え~と……」
指に口を当てるお決まりのポーズで、栞が考え込む。
「秘密です」
お決まりの台詞が、返ってきた。
「やっていいか?」
「何か分かりませんが、とりあえずだめです」
妙な間が生まれる。
と、そのとき突風が吹いた。
「キャッ!」
ストールが絨毯のように雪の上で広がり、栞がその上に尻餅をつく。
風で倒れたわけではない。
「ゆ、祐一さんっ、どうして押し倒すんですかっ?!」
雪崩れ込むように、祐一も栞に上にのしかかる。
「ドラマみたいで楽しいだろう」
栞を押さえ込み、祐一がその上で楽しそうに言った。
「楽しくありませんっ」
きっぱりと、栞が言った。
「はたから見たら、俺たちはどう写るかな?」
「か弱い女の子が、受験に失敗して自棄になって痴漢行為に及んでる浪人生に襲われてるようにしか見えませんっ!」
ずいぶん口の達者なか弱い女の子だと、祐一は感心した。
「さぁて四次元ポケットの中身をチェックするかぁ」
栞のスカートに、祐一の手が伸びる。
「よ、四次元じゃありません……。それにどうしてそうなるんですかっ!」
「何が出るかな……何が出るかな……」
栞の訴えを無視してポケットをまさぐり、その中の感触に祐一の顔が、愉悦にゆがむ。
「歌わないでくださいっ! って、や、やめ……!」
祐一の行為に、栞が羞恥のあまり赤面し、身を捩じらせる。その反応に、祐一は満足気に頷き、そして本懐を遂げるため、行為に没頭するのであった。
「おっ、栞のポケットからこんなものが……」
ポケットの中のものを引っ張り出し、それを栞にひけらかす。少女の秘密が、次々と暴かれていく。
「祐一さんなんて大ッ嫌いですっ!」
祐一に押さえつけられ、成すすべなく栞は叫ぶのであった。
少女の未開の秘境を暴く行為は、祐一が満足するまで続いた。
――数刻後
「な……なんで……」
息も荒げに、祐一が雪の上に尻をついてへたり込む。
「なんでこんなにいっぱい出てくるんだっ!」
祐一の指差す先には、ポケットから出てきた物で、ちょっとした山が出来上がっていた。
行為の後であった。
「手伝ってくださいよ祐一さん。仕舞うの大変なんですから」
栞の笑顔が夕日に彩られる。この状況を愉しんでいるのだろうか? 祐一は栞の笑みに魔を感じた。
「これをか……?」
祐一がポケットから出てきた物の山を指差して言った。山のてっぺんにあるスケッチブックが、風で旗のようにパラパラとめくれた。
<終>